2014年10月01日

かばん8月号「また、夏」(特別作品・連作12首)


『また、夏』

 繰りかえす夏の痛みにきらきらと心はいつも傷つきたがる

 いちまいの布としてある夏空をあなたは青い夢にたとえる

 立ち止まるきっかけはなくえんえんと続く水際えんえんと行く

 吹かれるがままに棚引く短めの髪に手を その手に手を添える

 ささやかな火種を持っていることも喜びめいて夏のうわつき

 甘い声 圧力 憂い 湧きあがる雲を指さすときの共振

 つないだ手を振りつつ歩くお互いのあいだに線を何度も引いて

 願ってもそちら側にはいけなくてあたりいちめんすっかり寂しい

 髪の毛に西日を引火させながら輝く星の危うさを言う

 でたらめな童話を作る遊びにも幸せな結末(ハッピーエンド)は見つけられない

 夕凪を死と言いかえて海沿いの公園に死がありふれている

 夏を呼ぶ仕草のように木々は揺れどこまでが夢だったのだろう


(かばん2014年8月号掲載)

posted by 田中ましろ at 22:45| Comment(0) | TrackBack(0) | かばん掲載歌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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