2013年10月07日

かばん9月号「秋へ」(連作8首)


『秋へ』

 さりげなく来ていた春の一歩目に名前をつける夏のふたりは

 月島は夢の切れはし重力に逆らうような言葉かわせば

 公園のすべての青を洋服に吸わせて夏のあなたは跳ねる

 告げる名をきらきらさせるさざ波に流されたってよかったのだが

 はじめての最後を思う階段をのぼるときみな俯くように

 種なし葡萄に種のないこと水ぎわに落ちたね生まれ落ちてしまった

 ビルに取り囲まれ影がなくなって僕たちはなにものにもなれない

 秋の気配にわかに沁みる夜風にうつくしい死にかたの話を



(かばん2013年9月号掲載) 
posted by 田中ましろ at 16:38| Comment(0) | TrackBack(0) | かばん掲載歌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/376849215

この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。