2013年03月19日

かばん3月号「春に待つ」(連作8首)


『春に待つ』

 待ち人は来ましたかって街じゅうの人に問いたい初春の駅

 降る雨はかなしいと言う ふたりして見ていても雨はかなしいと言う

 春の波としてあなたはゆっくりと深くわたしに押し寄せてくる

 ちぎったらもう戻らないエイヒレを分け合うことも答えのひとつ

 茶化しあいながら大きな布を織るように言葉でことばを探す

 お湯割りの焼酎ぬるくなるまでを核心以外のことにまみれて

 距離感はふたりで決める約束のまま冷静な手を触れあわす

 やがて去る波に寄り添う未来図を帰路のあなたの顔も知らずに



(かばん2013年3月号掲載)

posted by 田中ましろ at 14:07| Comment(0) | TrackBack(0) | かばん掲載歌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:


この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。