2012年12月17日

かばん12月号「いつもと同じ夕暮れのなか」(連作8首)+回文短歌1首


『いつもとおなじ夕暮れのなか』

 安眠と呼べるだろうか麻酔から目覚めるまでの父の不在は

 取り出した臓器は医療廃棄物/こちらがおとうさまの胃です

 重力にさからう術を失って胃はだらしなく手にのしかかる

 蛍光灯に胃を晒しては斑点をかぞえる医師のにぶいまなざし

 たくさんの嘘をあなたについたけど大丈夫って嘘は初めて

 にんげんのかたちを保つ縫い目から滲む水 そうだ生きたいのだ

 生きるとは何を残すかではないと父は言う 何も残さないと言う

 心臓の近くにひとつ空洞は生まれてみんなみんながうさぎ

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<誌面企画への出詠>
○山田航さんの回文をひとつ選び短歌もしくは散文を返す企画に寄せて
(山田さんの回文)
明治時代、添い遂げしわが妻小松川シゲと急いだジジイめ

(回文へのましろ返歌)
 秋刀魚にて飯食う母の意地張れば爺の歯は浮く しめて二万さ
 【さんまにてめしくうははのいじばればじいのははうくしめてにまんさ】

(かばん2012年12月号掲載)

posted by 田中ましろ at 23:22| Comment(0) | TrackBack(0) | かばん掲載歌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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